キャリぷらスタッフブログ「全員正解」

キャリぷらスタッフのお仕事奮闘記。仕事は誰でも必ずできる!意識高くなくていいから仕事ができる社会人を目指します。

他人の心を震わせる言葉とは(長文注意)

スタッフブログ、水曜日担当の眉毛おじさんです。

昨日、2022年9月27日、理不尽な凶弾に倒れた安倍晋三元首相の国葬儀が行われました。

国論を二分する国葬について言及するつもりはありませんが、政教分離憲法のもと、無宗教式でありながら、非常に厳かに、粛々と進行していったことに深い感銘を受けました。

多少なりともテレビやSNS国葬を見た人は、菅義偉前首相の友人代表としての「追悼の辞」は、心にグッとくるものがあった人が多かったのではないでしょうか。

私もその一人です。

ご覧になっていない方、追悼の辞の全文はインターネットニュースで検索すれば出てきますし、併せてぜひ動画でもご覧いただきたいと思います。

無粋かもしれませんが、菅前首相の追悼の辞は、どういうところが心に響いたのか、私なりに分析しました。

以下の7つの要素があげられます。

①時間の経過を表現
追悼の辞の開口一番の言葉が「7月の、8日でした」から始まります。そして、「あの、運命の日から、80日が経ってしまいました」と日時経過を表現します。聴衆に、日時経過という共通認識をもたらします。聴衆の一体感を促します。

②聴衆の頭に情景を浮かばせる
「やかましかったセミは、いつのまにか鳴りをひそめ、高い空には、秋の雲がたなびくようになりました」と、聴衆の頭に映像を結びつけます。そして、この間の移り変わりについて、それぞれの聴衆が思いを馳せます。

③自分の感情表現
「口惜しくてなりません」と自分の感情を言葉で表現します。自己表現に他人である聴衆は口をはさめず、共感する方向に向かうことが多くなります。素の感情表現が心に響きます。

④二人称での呼びかけ
安倍総理…と、お呼びしますが、ご覧になれますか」「明日を担う若者たちが、大勢、あなたを慕い、あなたを見送りに来ています」と二人称で呼びかけます。聴衆はあたかも自分が安倍総理になったような感覚になり、第三者から当事者へと変わります。

⑤秘密の暴露
・新聞を見た「あなた」が私に電話をかけてきたこと
・銀座の焼き鳥屋で私が「あなた」を総裁選に出馬するように口説いたこと
・総理が官邸にいるときは欠かさず1日に1度気兼ねのない話をしたこと
など、二人でなければわからない事実を暴露することによって、聴衆の知りたい欲求を満たし、さらに話を聞きたくなる効果を出します。

⑥引用(比喩)表現(他人の言葉の効果)
衆議院第1議員会館、1212号室の、あなたの机には、読みかけの本が1冊、ありました。岡義武著『山県有朋』です」と引用。「総理、いま、この歌ぐらい、私自身の思いをよく詠んだ一首はありません」と話し、歌を詠みます。「かたりあひて 尽しヽ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」
自分の気持ちを他人の言葉を引用して表現することにより、「悲しい」という直接表現よりも強い言葉で聴衆の心に響きます。

⑦「間」を意識した話法(つなぎの言葉を使わない)
ほとんどの人は会話をするとき、「つなぎの言葉」を多く使います。
つなぎの言葉とは、「えーと」「うーん」「あー」「そのー」など、話しているとき、文章と文章の間に入れてしまう言葉です。私の口癖は「あのー」です。わかっちゃいるけどなかなか直せない。
つなぎの言葉を使わない話法を使った場合、話している文章と文章の間に、ほんのわずかですが、無音の状態、つまり「間」ができます。この「間」で、聴衆はぐっと前のめりになり、次に話す言葉に集中します。つなぎの言葉が入ると、話が流れてしまいます。
菅前首相が官房長官の時代から会見等で話す姿を見ていましたが、つなぎの言葉が極端に少ない人だと思っていました。秋田県出身で訥々とした話し方を武器にしていると感じました。
つなぎの言葉を使わない代表的な方は、天皇陛下上皇陛下、皇室の方々です。
菅元首相の話法は、長年の政治家生活で培ったものを思われます。どうやったら相手の心に響くかを四六時中考えて実行していたからにほかなりません。

そして、素の姿を聴衆に見せることに躊躇のない(ようにみえる)ところが、皆の心を震わせる言葉になったと私は思います。

通常、葬儀では弔辞が読まれても拍手はしません。今回、日本武道館の広い会場でどこからともなく拍手がわき、それが万雷の拍手となりました。参加者の心を震わせたのが手に取るようにわかる瞬間でした。

このブログは就活生や若手社会人が読んでくれていますが、このように文章を分解すれば、自分でもできること、出来ていることがわかるのではないでしょうか。

相手に伝わるように話すこと。相手の頭の中に映像を浮かばせること。これを心掛けてほしいと思います。