前回の続き。
建設冬の時代を受け、新卒採用は厳選化が長く持続しました。
しかし、幸いなことに、年度での新卒採用が一人もできないということはありませんでした。それまで10人以上採用していたものが、少ないときで5人前後にはなりましたが、ゼロはありませんでした。
なぜ幸いかというと、バブル崩壊後、新卒採用をゼロにした会社は、ゼロにする前の社員が成長しないことが多く見られたからです。
後輩が入社してこない状態が長く続くと、いつまでたっても最後に新卒で入った社員はいわゆる「ぺーぺー」のまま。
後輩が入社してくれば、年次が上がるにつれて取り組む仕事の量も質も変わり、ビジネスマンとして成長します。しかし後輩が入社しないといつまでも仕事の量も質も変わらず、上司や先輩の指示命令のままに動く「作業ロボット」化してしまう。
時は不況真っただ中で、転職もままならない環境に置かれ、本人たちではどうしようもないことなのですが、それが現実でした。
その後、新卒採用が再開され、後輩が入社してきても、その社員は指示命令をしたことがないので後輩の指導ができない。
入社した後輩たちも先輩があてにならない。指示命令してくれる人は年齢の離れた上司。もちろん戸惑いも多くなります。
そういう状況でも自らが学んで成長してくれる人材を求めていくと、企業は「自律型人材」が欲しい、ということになります。
その頃から、企業の求める人物像に「自律」という言葉が盛んに使われるようになったように思います。
その反省からか、その後の社員教育に、「メンター制度」、つまり先輩が新入社員に一対一でついて社会常識も含めて仕事のやり方を教えていく方法が取り入れられるようになりました。
その点、当社は新卒採用を継続していましたので、新入社員が成長する土台は維持できました。
変わったのは、求める人物像でした。
それまでは、ともするとまじめにコツコツと仕事に取り組み、文句を言わない学生が好まれていました。
厳選採用になって、一人一人のパフォーマンスの大きさ、上司に食らいついていく貪欲さが重要になりました。
採用する社員数が少なくなれば、一人一人のパフォーマンスが大きくなければ会社はやっていけないからなんですね。
そして、大学教授からの推薦による採用はなくなりました。
次回へ続く。