スタッフブログ木曜日担当の眉毛おじさんこと竹村です。
前回の続き。
都議会議員選挙がどんどん近づいてきました。
朝は8時に出勤し、事務所作業を終え、原付バイクで選挙区を回り、事務所に戻ってから立会演説会や町内会の会合に出席。事務所に戻り事務作業をして、家に帰りつくのが平均24時。よく、体がもったものだと思います。
私の担当は「地回り秘書」。選挙区をくまなく回り、支持者を獲得していくことが最大の仕事です。
その事務所には先輩の秘書がいました。
衆議院議員の秘書も経験した、20代の若手ですが演説のとてもうまい先輩でした。
一日16時間勤務。
私がだんだん疲れていくのが見えたのでしょう。その先輩から、地回りに出たあと喫茶店に呼び出されました。
「竹村君。四六時中根を詰めて仕事をしていたら体がもたない。気を抜く時間も仕事のうちだ。外回りをしているとき、適度に休憩を取りながら仕事をするように」
と言われました。
それから、その先輩と、朝は選挙区外の喫茶店に行って英気を養うことが日課となりました。
事務所における私の担当業務の一つは「IT業務」。
といっても、当時やっと世間に出回った「ワープロ」(私物でしたが)を駆使し、立会演説会や後援会報を作成していました。そのおかげで、会社に入ってからもタイピングは会社の中で一番早く打てたのを覚えています。
一日16時間勤務の日々が続いていましたが、議員夫人付きの運転手をする機会が多くなってきて、徐々に心に変調をきたしました。
その夫人は大変エキセントリックな人で、事務所の秘書が長続きしないのはその夫人のせいだと支持者から言われる始末。
秘書をかわいがっているつもりなのでしょうが、言動、行動は過激。
大雨が降っている夜の10時に激高し、「いまから○○さんのところに行って!」と言われたこともありました。
徐々に政治の世界が見えてきたのが入所してから1年が経過したころ。
あの人は実は対立候補の支持者じゃないのか、実はスパイなのではないのかなど、疑心暗鬼の塊になるのが選挙前です。
裏切られることは日常茶飯事。それでも笑顔を絶やさずに支持者と接していました。
ある日、12時過ぎに家に帰って風呂に入って上がり、鏡に映る自分の姿を見たとき、愕然としました。
その鏡に映っていたのは、自分が毛嫌いしている人間の顔でした。
猜疑心の強そうな、「卑しい顔」をしている自分が映っていました。
そうです。いつの間にか人を見ても人と思わず一票と思うようになってしまっていたのです。
その時、政治家になるのをやめようと心に決めました。
後から考えれば、私は「政治家になりたい」のであって、政治家になることを目的としていたことに気が付きました。
政治家は手段です。「日本を変える」「地域を変える」「住民の声を反映させる」ことが目的でなければ、この仕事は続かないことがわからなかった。
仕事に例えると、人生を豊かにすることを目的に据え、働くことはその手段であるということ。
就活に例えると、仕事をして自分の人生を充実させることが目的であり、内定はその手段であること。
目的と手段。
立ち止まって考えれば、より良い自分の選択が得られると思います。
入所して1年2か月後、都議会議員選挙が実施され、議員はからくも最下位ながら再選を果たすことができました。
支持者を集めて祝勝会が行われ、みんなが帰ったとき、私は胸に潜ませていた退職届を議員に渡しました。
翌日から事務所には出所しませんでした。
余談ですが、入所から退所まで、休日は7日しかありませんでした。
続きは次回。