スタッフブログ木曜日担当、キャリぷら東京スタッフの竹村です。
このブログ、皆様は何時にお読みいただけるかわからないので、今回から挨拶は「ごきげんよう」にします(笑)。
さて、前回の続き。
「地獄のホテル実習」。いろいろと地獄はありましたが、なんといっても男8人で一部屋の集団生活が一か月半続いたことが一番です。
当時、一年生は3人。洗濯は上級生も各自でやりましたが、掃除は1年生の役割でした。
何よりも大変だったのは、毎夜毎夜、反省会の名のもとに繰り広げられる「飲み会」。
一年生は、つまみの買い出しはもちろん、飲み会中は先輩にビールを注がれたら必ず注ぎ返さなければならず、先輩のビールが減っていたら注がなければならず、話に夢中になって忘れると、先輩からすかさず「ビールがないぞ!」と言われ。
挙句の果てにしこたま飲まされ、泥酔して眠って朝起きると体中マジックで落書きされていました。
先輩も考えたものです。顔や腕など他人から見える部位には落書きがなく、腹や足など見えないところは落書きだらけでした。
洗っても黒マジックで書かれた落書きは落ちることなく、一言、「理不尽だなあ」と。
高校時代もゴルフ部で、挨拶の声が小さかっただけで3時間、ゴルフ練習場のコンクリートの床に正座させられた時も同じ思いをしましたが。
理不尽。
社会に出てみれば、こんなことは大したことではないと思うくらいありました。
時代が理不尽さを許容していたからです。
私は後輩や部下に対して行動するときは、理を尽くすことを心がけてきました。
今は、公では理不尽なことが許されない時代。「説明責任」が求められる時代です。
それでも社会に入れば理不尽なことはたくさんありますし、理不尽が許容されなくなっている分、陰湿になっているかもしれません。
理不尽なことに慣れろとは言いません。心が腐り、改革改善する気を失いますから。
理不尽なことは「ある」ということを分かってほしい。
理不尽なことにあったら、その背景を知る努力をすると、一歩、大人になれる。
そう思って社会人を楽しんでほしいと願っています。
さて、地獄の実習、耐え抜きました。
耐え抜けた理由は、お客様の「ありがとう」の言葉があったからです。
実習中のある日、管理部門の社員から呼び出されました。
何か問題があったのかと思い、ドキドキしながら事務室に向かいました。
無機質な事務室。ホテルはお客様から見える場所はきらびやかな装飾を施してありますが、バックヤードは壁も床も白を基調とした無機質な空間が広がっています。
表では満面の笑顔の社員も、裏に入ると鬼瓦のような表情をしている人も少なくありません。そんなことを思いながら事務室に入っていきました。
無表情な社員は、「君に手紙が来てるよ。ほら」と言い、無造作に手紙を差し出しました。
かわいい封筒にひらがなで「たけむらさま」と宛名が書かれていました。
裏には見覚えのある名前が。
バックヤードの休憩室で封筒を開くと、「やさしくしてくれてうれしいでした」と書かれた女の子からの手紙と私が一緒に写った写真が入っていました。
もう一枚の便せんには、その女の子のお母さまから感謝の言葉がつづられていました。
はて、私は何か特別なことをしたのだろうかと記憶をたどりました。
そのお客様はおじいさん、おばあさん、お父さん、お母さん、女の子の3世代5人。
当時の箱根プリンスホテルは、ホテル棟の客室以外にコテージがあり、ご家族はそこに宿泊されました。
我々ベルボーイは、コテージまでお客様を電気自動車で送迎する役も担っていました。
足の悪いおじいさまの補助をして電気自動車にお乗せしたり、入り口まで階段のあるコテージに手を引いてお連れしたりしたことを思い出しました。
ほかのお客様への対応と特に変わったことはしていません。自分ができることをしたまで。
ホテル、それもリゾートホテルで楽しもうと思っているお客様にとって、一瞬一瞬が大切だということ。それが学びでした。
30年以上経った今でも、いただいた手紙は私の宝物です。
温かい思いを抱きながら、大学1年の夏、鬼の実習は終了しました。
大学生活、まだまだ続きます。