こんにちは。
スタッフブログ木曜日担当、眉毛おじさんこと、キャリぷら東京スタッフの竹村です。
前回は、私の幼少期から高校時代までをお伝えしました。
今回はその続きです。
大学受験もせず、ゴルフに明け暮れた高校時代でしたが、高校卒業を控えた3月の1ヵ月間、友人の親が経営している志賀高原のスキー旅館でアルバイトをしました。
高校ゴルフ部の厳しい練習で、たびたび足首をねん挫し、今後も激しい運動を続けるかどうか悩んでいました。アルバイトをしながらじっくり考えるつもりでした。
アルバイトの内容は、旅館付属の喫茶店兼スナックで、コーヒーなどの飲み物やカレーやスパゲティなどの軽食を作り、提供するものでした。
旅館に住み込みだったので拘束時間は長かったのですが、スキーもできましたので、それなりに楽しんでいました。
その喫茶店にはマスターがいました。名前は「健さん」。年齢は三十代後半だったでしょうか。口ひげを生やし、喫茶店のマスターをしながら、休憩時間にはスキーを楽しむ自由人でした。スキーのオフシーズンは何をしていたのかわかりません。
一見ちゃらんぽらんに見える「健さん」から言われた言葉で、今でも覚えていることがあります。
「竹村くん。この喫茶店でも会計の時に、こちらが『ありがとうございます』と言っても無言でお釣りを受け取って出ていくお客さんがいるよね。お金をもらっているから仕方ないとあきらめているが、あまり気分の良いものじゃないよね。」
と、健さん。
私の実家は料亭を営んでいたので、物心がついた時から玄関で下足番をしていたことを思い出しました。
食事の帰りに無言の客。「ご馳走様!」と子供の私に声をかける客など、様々な反応がありました。
中でも覚えているのは、私に向かって「大将、いる?」と声をかけたお客様です。
私は料理人だった父親に声をかけ、父親が玄関に出てきたとたん、そのお客様は父親の手を握り、「大将!美味かった。お客さんも喜んでいたよ。またよろしくな」
と一言残し、店を出ていきました。
そのお客様が帰った後、父の表情をうかがうと、満足そうに満面の笑みをたたえて独り言、
「こんなことを言ってくれるお客様には、『金は要らねえ』って思っちゃうんだよな」
もちろん、店を続けるためにも家族を養うためにも対価としてのお金は必要でしょう。しかし、精魂込めて作った料理をおいしいと言ってくれるだけで、明日の活力になる。父親はそういう気持ちになったんだと思います。
心理学では、アブラハム・マズローの言う「承認欲求」が満たされたということなんでしょう。
そんなことを思いながら、健さんの言葉は続きました。
「喫茶店のような飲食店では、『ごちそうさま』っていう便利な言葉があるけど、洋服屋やスーパーなんかではどうする?」
「そうですねー。小さな声で『どうも』って言いますかね」
「そうだね。『どうも』っていうことが多いかもね。店員が『ありがとう』って言ってくれるのに、こっちも『ありがとう』じゃ芸がないしね。『どうも』ってのもなんとなく中途半端だよね」
「うーん…」。適切な言葉あるかどうか悩んでいると、健さんは、
「そういう時、『魔法の言葉』があるんだよ」
「なんですか?『魔法の言葉』って」
健さんは言いました。
「そういう時、『お世話様』って言うんだよ」
なるほど!とひざを打ちました。
「ご苦労様」ほど上から目線でなく、相手に感謝を伝えられる…。
私はそれ以降、この言葉を頻繁に使いました。
自分でも驚きましたが、その後、いろいろなお店の店員さんの「笑顔」を見ることができました。
前職で人事をしていた時、内定を受諾した学生から、
「就職までの間、何をすればいいですか?」
と、よく聞かれました。
私は、
「とにかく、お店でお金を払うとき、飲食店ならば『ご馳走様でした』コンビニなどの店ならば『お世話様でした』と言いなさい。それを習慣づけること」
と言います。
人間関係はキャッチボール。一言返すだけでよい関係が成り立つので。
続きは次回。やっと大学編です。